真 夜 中 の 秒 針


メジャートランキライザー、口に放りながら無頓着さを晒して笑う。怖いのは「終わり」じゃない。怖いのは、ぼくが本当に怖いと思っているのは、「いつか終わると分かっている始まり」の方だ。

スクリーンの無声映画には色がある。すべて失いモノクロになってしまったのはよっぽど、ソファの上の二人じゃないか。真剣に映画を見るふりで必死に君を感じている。正午ヒステリックに「もうすぐぼくは死ぬんだ」と喚いていた君の横顔。唇は芸術的にうつくしい。笑いながら咳をする。痩せた手が口元を押さえる。もしもいつか君のことを思い出す日があるとすれば、それはきっとこのシーンに違いないと思った。黙って顔を寄せれば息は雪のにおいがする。下唇だけ舐めた。君はそれを厭わない。秒針が時を刻む。銀の鋏となって二人を刻む。キッチンで何かが零れる音がした。気にしない。泣けば容易く嘘になる。だから病的に笑って壊れたふり。深夜二時、君が「出かけよう」と云い出した。

「出かけよう。もっと寂しい場所へ。ここはあまりにも賑やかなんだ」

ああぼくは待ってた、君のその言葉を。そう、もうこんなところに居ちゃ不可ないんだ。だってぼくらは見なければ。星、世界の終わりのような夜を。

040214