その人は自分で考える。それから自分で動く。静かに閉じることで平衡を保てると信じていた僕の前に現れるなり君の欲しい身軽さとやらは絶つことでなく結ぶことで案外簡単に手に入るものかもしれないと知らせた。灰色のテーブルに十センチの厚さに閉じこめられた水中をくぐった光が斜めに落ちて名前のわからない一輪挿しが明日にはがくを離れていくなと思わせたんだ。僕がつらくあたる世界は僕を拒んでさえいなくてそれを分かりたくない僕はまるで食べ方を知らない子どもみたいだったな。それで勝手に食わず嫌いになるんだ。背後の蛇口から水滴の落ちる音がする。まさか。四分の一世紀前の出来事で地上の管はすべて凍結したはずだろう。だが待てよ。僕はそれをどこで確かめたのだったか。(太陽は西に留まったままか、本当に? それは、本当に?)。信じても疑ってもこの建物を出たら夢にさえ浸ることはできないだろう。顔を潰された者たちは青空のあるうちに鉄塔からばらばらと落ちていった。さかさまにしたスナック菓子の袋みたいに。地上の定点をめざして。北極のペンギンみたいに。射的みたいに。小さな赤色に焦がれるみたいに。それができず残存し、壁の中で成長したこの体とすぐ傍で聞くことのできない吐息に絶望じゃなく希望を繋ぎながら新しいその人を、まだ見ぬあなたを僕は手繰り寄せていける。手繰り寄せられたい絆を信じるなら。信じる行為を疑っても、絶望は希望を繋ぎ続けた。それだけが新しい温度を、磁場のように運び続ける。



こ の て の ひ ら へ