赤 毛 の ジ ャ ズ


彼女とぼくは兄妹じゃない。だけども同じ家で育った。あの家には父親がひとり、母親がふたり。ぼくは彼女をジャズと呼んだ。彼女には彼女の本当の名前があったんだろうけど、ぼくはそれを知らなかったし、彼女はそれを気に入っていなかったし、まあつまり名前なんかどうでも良かった。ぼくたちが本当にすてきれないものなんてない。

ある日こっそり家を出て彼女とぼくは仕事を始めた。他人は信用できないからふたりだけで始めた。誰も子どもの仕業ときづかなかった。ぼくたちは楽しかった。crownみたいに満足だった。そのまま簡単に金持ちになった。乾いたstomachに強いliquorを流し込んで住んでいた家の悪趣味さについて笑った。ふたりの母親たちの奇妙な仲の良さを笑った。真夜中の男女三人のplayを笑った。笑い飛ばした。そうすることで塗りつぶした。消すことはできないから塗りつぶした。

同じものを見てきたはずだった。
同じことをしてきたはずだった。
それなのに、いつだって、離すことのできる手。

ぼくに向けられる銃口は震えもしない。それが彼女を説明できるすべてだと思った。哀しいはずなのに、許していた。彼女には当然それが許されるんじゃないのって。

彼女の言動はいつも突然で理由なんかなかった。そのうえ正しかった。彼女はきっとシャワーを浴びている間に思い立ったのだろう。濡れっぱなしの髪がalgaのように肌にはりついている。リボルバーの黒と髪の赤と瞳の黒と幼いやわらかな黒と、ぼくは彼女の何だってどの部分だって口に含むくらいなんてことない、うらぎったりしない。

「ジャズ、ジャズ、ジャーズ?そんな物持って、何やってんの」
ぼくは呑気にたずねる。葉巻をくわえてcaptainみたいにフォッフォッフォと笑う。ぷかぷかとsunfishのような煙を吐く。riskを感じないわけじゃない、ぼくだってそんな鈍感じゃない。ただ、
「死ぬの?それとも、死なないの?」
彼女の視線の前に何物も非力だ。だってそうだろ?
「ブラボー、ジャズ。お前、たまにすごくいい質問する」
頭上でパンパンと二度拍手した。彼女はくすくす笑った。突然、銃口から吹き出すbunting、子どものような恰好でジャズは抱きついてくる。「嘘だよ」。
さっき、もしぼくが自分の銃を取り出して銃口を君に向けていたなら、ぼくたちの物語はあっけなく終わっていたね。
「やっぱり、好き」
ジャズはかわいい。ジャズはきれいだ。ジャズはにんげんだ。ジャズだって哀しい。ジャズだって痛い。息をしているからだ。人形じゃないからだ。感情があるからだ。生きているからだ。ジャズは大人たちの都合のいいobjectじゃない。ジャズはおまえらの玩具じゃない二度ときたない手でさわんじゃねえくそったれ。

ぼくたちは普通であることを放棄して、誰かのとった方法ではもう幸せになれない。誰かの足跡をなぞらえてconcordに心地よさを感じられるような素直さも忘れた。それでも、絶え間なくふたりを襲うdespairのなかで、幼稚なsmileを、いつでも適度なcuriousを、少しでも可能性のあるあらゆるひかりについての。

「おどろいた?」
「ああおどろいた」
「ほんとに?」
「メルシー、眠気ぶっとんだ」
「あはは。またしてもいい?」
「勘弁して」
「ふふふ」

なあ、ジャズ。
もしもだけど。
もしもあの銃がほんものでも。
ぼくはきっと、君をきらいになんてならなかったよ。

050216