名前が分からず迷子になった
ここはどこかも
どこを目指していたのかも分からず

隻眼で見る夕陽
遠近不明な空の焼け方
カメラは何も映さない

帰り道が消えていてよかった
覚えていたら振り返っていたよ
ほとんど子供の素直さで
きっと声を上げてぼくは泣いた





あなたがぶつけた
憎しみの類を
僕はきれいに吐き出そう
まるで魔法みたいに

難しいことは何一つない
太陽がのぼり
月が沈む
そしてその逆
だけどいつか壊れるかもしれない

誰も知らない秘密
きっと一生抱えていくと知った夜明け
目尻から顎までつたった涙の
描いた放物線は微笑みの弧を示す

破られたいくつもの約束
欠片は化石となって
凍土の下に堆積する
僕の鬱屈は殆ど完璧に放擲された





引き裂いたら
後は振り返らない
いつ死んでもおかしくないって
そう思っていたけど
道脇に寄せられた小さな肢体
それもれっきとした死体であること
追悼は眼差しにのみあらわれる
死者を見る生き物の目は何故みなこんなにも優しい
命あることはそんなに憎ましいことなのか
同じ手でナイフを握って
それがまだ食事のためか凶事のためかも分からないで
僕は少し心もとなくそして寂しい
あなたが何者であってもきっと逆らえない
幼い寝顔の上で踊る乱反射を見てしまったから逆らえない
聞いたきみは嘲笑ったね
たとえそれが僕のみに見えた幻だったとしても





この中には何かある
きっと何かがある
そう信じて歩かせるに足るような
きみの命の理由で僕はありたい





近づく何かを捕えようとして
僕の目はそれっきりになる
ものの存在しない視界で
手のひらに書き綴られる文字を追う
毎日、毎日
ぼくの絶望が今日誰かを生かす
呼吸のように誰かを憐れみたい誰かがいて
それは何者にも責められない事象だ
とどかない正解にも怯えなくていいよ





間際の一瞬は何よりも輝かしい
僕の目は柔らかなものしか知らなくて
初めて知る閃光は手を翳して忌避する

だけど徐々に光度にも慣れ
やがて瞼を開いてみた瞬間
きっと何者でもなくなってしまう
きっと最初から何者でもなかった

王冠は花冠に過ぎない
だけどそれはきみの指に血を流させた
大いなる植物の冠だ
これ以上の光栄を僕が掲げたことはなかった





病的だね
あまりの正しさに
僕の台詞はそれくらい
勝手に幸せで
勝手に不幸せで
病的だね
それはほとんど病だね





崇拝も共感も
ほとんど意味をなさなくなった
これは吐息だ
少しだけぼくの中身を知ってる

美醜に分別されない
極めて曖昧な混沌
誰が知るでもなく
かといって認知を拒んでもいない

凝固されゆく想いの余りが
凪いだ水面に漣を立てる
文法の誤りなど問題ではない

伝わらないことを述べるということ
それだけが僕の愛

今はどうか知らないが
君はいずれこれなしに到底
生きてなんかいかれないだろう





これからもきっと
いろんなことが
君を蔑にする
もしも迷いそうになったら
その時は
迷わず僕にふれてよ
忌まれた君のその指で