一匹だけ
それは鳴き方を知らない
しがみついて
羽を震わせてみるけれど

夏はめまぐるしい
短くて鮮やかな
魔物みたいだな
僕を不安にさせる

思ったまま語ることが
恥ずかしくてできなかったあの日
答案用紙は汗に濡れて
まるで僕を産んだ人のように
あなたは笑った





誰もいなくなっても
きっと僕はここにいる
何も無い世界を
想像してしまうあなたのために
旅人が消えても
僕は発光しつづける
永遠のようにしずかにして
不要と云う者もいない場所で
朽ちることのない道標になる





怯えている
目隠しをする手が
僕の視界を覆うことで
自分の視界を覆えない手が

輝くことならたくさんあった
美しさならどこにだって溢れていた

大丈夫です、

冷たい掌の下で僕の目は本当は見たがっていて
何が安定を構成していたか
それを確かめさせてくれと願っていた

だから僕は言った
その手はあなたのために使ってくださいと
言葉は順調に誤解を受ける
あなたは僕を優しいと言う





寝ても覚めても鈍感な眼が
この雪原は真新しいと見誤る
それはでも鋭敏の裏返し
傷つきやすさを守るためだけの嘘

水は脈のように地表を這っている
比喩に疲れて僕は筆を捨てる
零れたインクが柔らかを穿って
僕ではない誰かの心を傷める

誓いながらも習得できなかった
たくさんの後悔が今
燦然と照らすよ
インクに溶けた僕もまたどこかへ流れる
浸された君の手をいつか汚す何かでありたい





表現は付随を求める
観客席には崇拝が満ちていた
聖堂はこの容姿を惹き立てる
本当に余計なのだ
惜しまれながら弦を捨てる
弓を折る
だけど人は飽きないで
僕の目に冷たい血が溢れる





振り返りながら君は行った
振り返るから君は躓く
僕は窘めたいが口が無い
行き先を祈りたいが息が無い





青い街
雷が走る
舗装された
何十年か前の
未来図みたいなハイウェイ
地平線を滑る
光の玉をぼくが
ぼくらの逃避行になぞらえて
きみは笑う
泣いてほしいのに
どちらかが終わりを言いだすんじゃないかって
たぶんふたりのうちどちらも同じに思っていて
ときどき思い出したように笑い合う
二人以外何も残らなかった世界で
初対面同士がはにかむみたいな純粋で




どんな形であっても大丈夫。体が動かなくても喋られなくなっても、言葉は、言葉だけはシャボン玉のようにあの塀を越えていける。この目が見ている間だけでも割れないでいてくれる。だいじょうぶという無責任な励ましほど僕を安堵させるものはない。何故ならそこに本当なんかないからだ。無責任に放られたものだけが僕に着地する。衒いなく受け止めることができる。自分を信じて欲しいと伝える時、訴えるような目をしていてはいけない。訴えは裏切りに似ている。同じ一途さでこの人は僕を裏切ることができるだろうと分かるから。時が来れば信じる。時が満ちれば当然のように二人はもう裏切り合ったりしなくなる。





わがままは傲慢で
幸せの代償に不幸を願う
ぼくしか救うことのできない生き物を願う
とらえられた音符たち
もう奏でないけれど旋律をぼくだけが知ってる
空が小さく切り取られてゆくね
あるひとはぼくを泣くけれど
こんなに穏やかな朝は今までに一度もなかった





「幻日」

光がさした
また始まる
きみのいない夢が
光さがした
眩しくて諦めてしまえばいいのに





「花畑にひとり」

何年も前から常套手段じゃないか
呼吸よりも瞬きよりも自然なこと
僕の目はいつだって乾いていて
そのくせお望みとあらば泣けるんだから
広い野原の真ん中で
僕が一度でも胸を痛めなかったって?
そんなの嘘だ
きみのせいでめちゃくちゃだったんだよ
きみが僕にくれたものなんかのせいで
もうどこへも戻れないよ
なんにも分かっていないことなんか分かっていたんだ





「水色タイムカプセル」

あの日とおんなじだ
大人になったらあけようねって
埋めた硝子の青い瓶
触れた土が冷たかったのを覚えてる

きみはきれいなものになって
ぼくは醜いものでいっぱいになって
いま向き合って
簡単な言葉には舌の上で土をまぶす

わかりづらくさせて
つたわらない可能性を残して
一縷の望みに幸せを望んで
そうしたらきみはぼくをもうほっとけないでしょう
(青い瓶の口が吐き出した正直ですべて台無しになるんだけど、)





祈りはとどかない
その先へ手をのばせるか
光じゃないかもしれない
希望ではないかもしれない
それでも祈りと絆の先へぼくは
、ぼくたちは