2004.6-2006.6





なんど叫べばこの咽は嗄れて
なんど触れればぬくもりに指は慣れて
なんど裏切られれば何もかもを諦めて
だれかなんて呼ばなくて済むだろう

なんど躓けば楽園はないってからだが気付いて
なんどsayonaraを云えばぼくらは分かり合えて
なんどひとりで眠ったならふたりでいることの意味なんか
むりやりに考えなくて済むだろう

おわりを見つけられるんだろう
流れ星のように弾けてしまえるんだろう





「北の祈り」

このせかいで
なんどぼくらは血を流しただろう
なんどぼくらは涙なんて忘れて
いのちを落としていっただろう

恨めしげに睨んでたって
神さまをみつけようとする
ひとびとの目の美しい哀しみに
いつか殺されて仕舞うんだ

もう何もみつけられないような気がしてた
誰にも出逢えないような気がしてた
だからいつわって突き放した
終わらせて自分のものにしたかった

名前すらない小さな光
影もない荒野のうえで生き残った
ふたつのいのち

寒さにかじかんだ
感覚もないくせにひどく
ひどく赤い指先を見つめて

きみは
汚れてしまった
とゆった

ぼくは
汚されてもいいよ
とゆった

きたない
とゆった

すきだよ
とゆった

かみさま
とゆった

かみさま
とゆった

ぼくらはただの一度もまだわかりあえない
どこまでいけばいいのかもわからないで
知らない国の歌ばかりうたった

ふたりはわすれた
眠ることも泣くことも
やさしくふれあえばそこにはまだ
あたたかいぬくもりの灯ることも

きっとわすれてしまったんだよ

041122





「人でもなくて魚でもなくて」

りゆうなく泣いたりした
できるだけ早く見つけてもらおうと

どんなふうにでもいい
一度きりの奇跡でいい
呼ばれてみたかったんだ

気が狂うくらいの
劣等感をくれる
きみのあかるい笑顔
ぼくはいつも
青と薄紫の乱反射する中
波紋の底からそれを見るんだ

まっすぐ願うこともできなくて
このまま残酷にもなれなくて
幼い我が儘はすこしずつ歪みはじめてる
このままどうにかなる
欲望がきみの裸にふりそそげばいい

嘆くため声が欲しい
叫ぶため声が欲しい
声が、欲しい
いつかきみの呪いになるように

041124





「楽園は」

一つずつそろえたね
りんごの苗やマフラー

真夜中にひとりで起き上がって
君の寝息の浅さを計る

間に合わないかも知れないとゆう
最悪の結末を思い描く

楽園は
おそろしく遠い

041230





いつかいつか
路地で
息絶えそうな猫にあったら
ぼくの血をあげたい
すべての血をあげたい
君のようにはなれなくても
君のようにはなれなくても





「かえりみち」

あきらめませんように
ころびませんように
きみがまっすぐあるけますように

どこへもいきません
ぼくはどこへもいきません
きみをひとりまよわせたままには

050130





「ららら」

自分のためだけに
存在させたかったんだ

きみから伸びるすべての蔓
その脈の潤いを
一滴残らず吸い上げたかった

だけどしない
もうしない
きみはぼくを
わすれたっていいよ
鳥になって飛んでってもいいよ

らららって
南へ

050324





「ホタル」

窓のむこうの光を見てた
あのひとのゆるしを待つうちに
もう夕方になってた

やさしい手に
傷をつけたんです
憎いからじゃなくて
ぼくのいた印として

窓のむこうの光を見てた
目隠しされた子ども
手術はたぶん失敗する

050429





「あおぞら」

あるあおい空の下で
この目がなにも見えなくて
この手がなににもとどかなくて
もう誰にも会えないのかと思った

ことばを紡ぐことを忘れて
置き去りにされた躰
路肩に鳴いてる野良猫さえも
精一杯生きていたのに

あのあおい空の下で
どうしてただの一瞬でも
呼吸を止めたいなんて
思ってしまったんだろう

今はひかりの中で笑える
とつぜん射した輝きに
怠けて重くなった舌まで眩み
一番最初の敏感さで
もう一度だれかを
たとえば君を、
すきだとしようか





羽は溶けても
この道を歩こうよ

ぼくたちは野良猫に
まなざしと名付けた

ぼくたちは野良犬に
よろこびと名付けた





きみなら答えを知っている
とだれかが云う
小さいころからそう
だれかが云う

きみにならできるよ
きみならだいじょうぶ
正直に云おう
何も知らない
何もできない
ぼくはちっともだいじょうぶじゃない

変な帽子かぶって
変な眼鏡かけて
変なつなぎ着て
いろいろばかなまねしてみる

それでもだれも捕まえてくれないから
有刺鉄線の向こう
ぼくは行くよ

沼はいつかぼくを殺そうが
今はまだ虹色の湖
けものも友だち
食われる心配なんてしていない

だけど夕焼けとは血のことだった
すみれ畑とは砂漠のことだった
ハミングとは慟哭のことだった
天使とは亡霊のことだった
ぼくとはぼくのことだった

そうだった
そうだった
何もかも知っていたんだよ
そういったことならぼくは本当に何もかも

(寝息)

楽しい夢が終わって
病床で目を覚ます

思えばぼくの頬はいつも
あたたかなきみの涙に濡れているね

051127





「旅」

頷くきみを泣きそう
もうどこへも行けないなんて
行けないなんてことなかった

まだ残ってる
行き先はある
最後の
奥だよ
しまっていた
二枚の羽根
救いを

間違いのまま終わらない夢

瓶に残した水
山頂に響くきみの名
まだ埋めたばかりの種子
いつか花が綻ぶ

そんな
鮮やかな妄想

どれもこれもまぼろしと分かって
先に発狂してくれた
ぼくはきみを泣かない

060107





きみが瞬きをすると
ぼくは泣きそうになる

耳にした鳥の鳴き方がおなじ
降りかかる夜の粉がおなじ

つめたくない、という奇跡
死んでいない、という奇跡

わからない体は
見下ろしたソファの上
小さくまとまっている
呼吸をやめずに
淋しいぼくに気づかずに

060220





「お国柄」

きらびやかで明るく
うつくしい上においしい

銃声はときどきするけど毎日じゃない
清潔で不自由じゃない

けんかはあるけど戦争じゃない
見たことないけど平和がある

それなのに
どうしてきみは首を吊るんだ

毎日、
毎日、

060225





「問答」

どうして泣くの どうして泣かないの
どうして食べるの どうして食べないの
どうしてきらいなの どうしてすきなの
どうして青いの どうして青くないの
どうしてわかるの どうしてわからないの
どうして生きるの どうして死なないの
どうしてここにいないの どうしてそこにいるの
悪趣味だね 悪趣味だね

060322





恋をしないと不思議がられるの
小さいままだと人はやさしいの

何かをすきになるということは
それに一生迷うということ

今日は何に迷おう
明日は何に迷えるか

子どもの舌で火傷を舐めて
そうして毎日死なないでいる

檸檬の舌で誰かを探って
そうして日々は繋がっていく

060618