「ああもう、ロクさんってば、またこんな場所で寝て。仕方ない人だなあ」
言葉と裏腹に満面笑顔のサンがロクを抱え上げる。俺の迎えが渋滞で遅れた。とりわけ最近になってから睡眠時間もほとんどなかったロクが、待ちくたびれて眠ってしまったっていうのも無理ないだろう。だけど、他人に抱えられて目も覚まさないなんて、あの日に比べればずっと成長してんだなあ、ロク。




9 1  秘 技 ア ラ モ ー ド 伝 授




「なあ。あの時の怪我は完治してんの」
「え?ああ、もうだいじょうぶですよ」
と、サンは指先までちゃんと動くことを見せてくる。横目に見て、アクセルを踏んだ。
「俺はね。お前がロクを庇って怪我しようが死のうがどうだって良かったわけ。新しい3番を補充してお前のことはさっぱり忘れてやるつもりだった。だけど、お前がついていながらあいつが怪我したり死ぬようなことがあったら、俺がお前を殺してた」
サンが俺をじっと見ている。笑いを堪えて無視した。こいつのことだから、まともに受け取ったんだろうなあ、今の。

「アラモード」
「え?」
「アラモード。あいつの好物」
「え、そうなんですか?」
分かりやすいやつ。
バックミラーに映るロクの寝顔が、潮風のにおいのするあの部屋のソファで眠っていた時のとまったく変わっていなくて、笑みがこぼれる。

「任せたぜ。3番。信じてんだ」

お前達には時間があるさ。今までどんな苦悩も悲惨な過去も薄めた時間の魔法が、今のお前達には十分にあるさ。

050424